
ワタクシはいわゆる潔癖症などではありませぬが、雑然とはしていてもある規則性に則って物が置かれていないとちょっとイライラしまっす。
例えば本や楽譜を床に積まねばならぬ場合、背表紙がフローリングの木のラインに沿って積まれていないと気持ち悪いし、各種家電のリモコンもワタクシの中で決めた順番に並んでいないと吠えたくなりまっす。
なので、たまに書店に赴いた時、平積みされている書籍が曲がっていたりすると思わず直してしまいまっする。
更に本棚に作者名の50音順に収納されているべきものが無視されていたりすると、ぬ”ら”ぁ~~~と雄叫びながら直してしまったりもしまっす・・・。
したがって、部屋の中、挙句の果ては外にまでゴミが溢れ出るというあの“ゴミ屋敷”という状態は全く理解不能なのでありまっす。何であんな状態で普通に生活できるのか?それ以前に、何でゴミをちゃんと捨てないのか?
そこにはその方にしかわからぬ複雑な心理が働いているのかも知れまっせんが・・・、ワタクシがもし、人体実験でこの様にゴミで猖獗を極めた部屋で1週間暮らさなければならなくなったとしたら、恐らく半日で気が変になる自信がありんす。
さて、今回のお話は旧愚ブログに書いた、身近に実在したゴミ屋敷の顛末でござんす。
千葉商科大学に入学し、速攻でギター部に入部したオイラ。(※そのあたりはここをご参照くださんし)
その時、4年生に進級したN先輩は、3年生に進級したT先輩とともにオイラにフラメンコ・ギターの奏法を手取り足取りご指導してくださった方でござんす。
一見、ボォ~っとした朴訥な方でっしたが、とても面倒見の良いナイスな先輩でござりまっした。
あっという間に1年が経ち、無事に2年生に進級したオイラでっすが、何とN先輩はあろうことか留年してもうた・・・。(まぁ、オイラも人のことは言えぬのでっすが・・・。答えはここにあり)
という訳で、もう1年N先輩と一緒にギター部でフラメンコを演奏出来る事になりまっした。
で、無事に秋の定期演奏会が終了し、年が明けてN先輩も無事に卒業が確定し、就職先の内定も得たある春の日・・・。
おい、お前ら。ちょっと俺んちに遊びに来いよ
と、突然誘われたのでありまっす。
今までそんなお誘いなど受けたことが無かったので???な気持ちになったのでっすが、その時、部室にいたオイラ、同級生のM 君、他に3人の後輩と計5人で学校から徒歩5、6分ほどの所にあったN先輩のアパートに向かいまっした。
おう、遠慮せずに入れや
とは言われたものの、オイラ達5人はまずその玄関の有様にかなり動揺いたしまっした・・・。なぜなら、本来は靴を脱ぐべき場所が大量のゴミで埋まっていたから・・・。且つ、そこはかとなく何とも言えない饐えた匂いもするんす・・・。
だもんで、2年後輩のH君が思わず
靴脱いで上がるんですか?
と真顔で問うてしまったのも無理はない・・・。
あったりまえだろがっ!ボケっ!
とN先輩は憤慨しまっしたけど、正直言ってオイラ、そして他の3人も気持ちは後輩H君と同様でありまっした・・・。
で、やむを得ず(?)全員靴を脱いで部屋に入ったのでっすが、部屋の真ん中には年中置きっぱなしなのであろう炬燵がデン!と鎮座しており、誠に信じ難いのでっすが、その周りはほぼほぼ炬燵と同じくらいの高さまでゴミで埋まっていて床が全く見えない状態でありまっした・・・。
しょうがないのでゴミの上に全員座ると、やおらN先輩が
そうだ。なんか飲み物でも買って来いや
と言うや否やゴミの山を掻き分け、小銭をいとも簡単に探し出すと後輩H君に渡すのであった。
その後、気まずい雰囲気のままひとしきり駄弁っているとN先輩がこれまた突然、
すまんっ!掃除を手伝ってくれっ!
と、いきなり頭を下げまっした。
どういうことかと言うと、当たり前でっすが、N先輩は卒業前にこのアパートを引き払わなければならないわけで、が、この5年の間に溜めに溜めまくったゴミを処分しようと業者に頼めばそこそこお金がかかる訳で、そんなこんなでこの大量のゴミの処理を後輩のオイラ達にやらせようという目論見のもと招集されたのでありんす。
事ここに至っては逃亡するわけにもいかず、覚悟を決めたオイラ達は役割分担を決めてゴミの処分を始めまっした。
すんげぇ量ではありまっしたが、いわゆる生ゴミ系はそれほどなく、どちらかと言うと紙類、衣類、ペットボトル、(中身が残っているものがあって辟易したが・・・)、ビールやジュースの空き缶等が主だったのは幸いでっした。(潰れたGのご遺体がそこかしこにあったけどね・・・)
キッチンのシンクもえらいことになっておって、排水パイプが詰まってしまっていて水が張っており、見た目はかつての手賀沼の如き様相になっちょったんでっすが、あろうことか
ボウフラ
が、クネンクネンとダンシングしながら湧いておった・・・。さすがにこれにはオイラも我慢できなくなり、ついつい
N先輩!なんすかこのザマはっ!ここは魔窟っすかっ!
まともな人間が住む部屋ぢゃねぇっすよっ!
と、罵倒してもうた・・・。
N先輩は平身低頭詫びを入れられまっしたが、逆にオイラは妙なスイッチが入ってしまい、“こうなったら徹底的に掃除しまくったぁるぁ~~~~っ!モード”に突入。
キッチンがこの有様っていうことは“雪隠”は、“厠”は、“はばかり”は、“用場”は、“トイレ”は
便所!
は、一体どうなっちょるんぢゃ?
まぁね・・・。詳しい描写は避けまっすが、それはそれは凄まじいものでありまっしたよ・・・。人間の尊厳を踏みにじられそうになりまっしたよ・・・。
結局、4~5時間かけてゴミを処理しまくって5年振りに部屋の床が露出し、やっとまともな人間の生活環境を取り戻した頃、玄関のチャイムが鳴りまっした。
N先輩が玄関に向かうと、そこには何とN先輩のご両親がいらしたのでありまっした。
全く偶然にご両親は無事卒業&就職先が決まったN先輩の様子を見にいらしただけだったのでっすが、アパートに着いてみたら何やら整理されたもの凄い量のゴミを目の当たりにして茫然自失とされており、オイラ達が挨拶をすると冷静さを取り戻し、N先輩がバツが悪そうにカクカクシカジカと状況を説明すると、親父さんはこめかみにぶっとい血管を浮き上がらせながら
こんのバカタレがっ!お前の不始末を後輩の皆さんに
やらせるとは一体どういう料簡なんだっ!
表出ろっ!
と、大音声で激昂し始めちゃったもんでっすから、オイラ達は慌てて宥め、取りあえず事なきを得まっした。
おふくろさんもこの有様にはかなり衝撃を受けられたようで、「もう、あんたって子は・・・。どこで育て方を間違えたのかしらっ!ブツブツブツブツ・・・」と親父さんとは逆にネチネチとN先輩に小言を仰っておりまっした。
オイラ達はいたたまれなくなって、「そ、それぢゃN先輩っ!また、明日っ!」と、今度こそ本当に脱兎の如くその場を離脱いたした次第でございまっした。
翌日、N先輩に会うと
昨日はゴメンな。いやぁ~、参ったよ・・・。
あれからも親にこっ酷く叱られちまったよ・・・。
そりゃそうでしょ・・・。まぁ、オイラが親でも怒るだろうな。
あれから30数年・・・。N先輩はお元気だろうか?
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