
昨日、公休を取った(と言うより、お店の子に金曜日と交換希望があった)ので今週は木~日と出勤ぢゃわい。
旧愚ブログにも書いたことがあるのでっすが、オイラは大学を卒業して最初に就職したのは電材関係の商社でござった。折しも、まだまだバブル景気に湧いていた日本。この会社もガンガン儲かりまくって、本社を葛飾某所から港区へ新本社を建てるくらいブイブイ言わせておった。
が、何かオイラはそんな予定調和的な日々がとても虚しく感じてしまい(今思えば若気の至りだったかもしれぬ・・・)、3ヶ月で退社。
やはり音楽関係の仕事がしたいと思い探しまくるもなかなか見つからず、とりあえずバイトで写植という仕事に就いたのであった。
この仕事は結構楽しかったのだけど、何しろ超激務であった・・・。
朝10時出社 → 12時~13時昼食休憩 → 15時~15時15分にコーヒーブレイク → 以降、 規定では19時に業務終了なのだが、大抵はてっぺん(0時)くらいまで夕食も摂らずにひたすら文字を打ちまくる・・・というのが現状で、眠気に襲われると白色の嗅ぎタバコを鼻から吸引しながら文字と格闘しておった。(実話。もちろん、変な粉ではなく嗅ぎタバコでありまっす。誤解無きよう)
こんな日々を3ヶ月あまり続けたある日、出勤途上の飯田橋駅で突然ブラックアウトしてぶっ倒れたオイラ・・・。原因は過労であった・・・。
このままぢゃ近いうちに過労死すると本気で思った・・・。
そんなヘロヘロな日々を過ごしていたある日、地元小岩の書店に“現代ギター誌”があり、何気なく立ち読みしたら、現在働いているお店が出版部門要員募集の広告を出しており、藁にもすがる思いで連絡を取り、ほどなく面接を受けてめでたく採用と相成ったのでございまっする。
そんなオイラが楽譜の仕事をするようになって今年で何と34年になる・・・。クリビツテンギョウでございまっすよぉ。
実を言うと当時は楽譜をシンプルに読むことは出来たものの、理論は全く勉強していなかったので、例えばお客人に電話で「そのアレンジは何調になっています?」などと質問されると全身から滝汗が流れ、同期の某音大出身の才媛、R嬢にいちいち教えてもらうという初手からバリバリの不良(品)社員なのであった。
このままぢゃいけぬと楽典を購入して勉強したんだよねぇ。
だいぶ楽譜の仕事が慣れてきたある時、オイラはふと思った。
楽譜って何で誤植が多いのだろう?
と・・・。
一般書籍にも誤植がある場合もありまっすが、オイラはあまりお目にかかった事がないのでどちらかというとレア・ケースと言えるでせう。
が、楽譜は実に由々しき事でございまっすが、誤植はあって当たり前の世界なのねん。
現在はコンピュータ浄書が一般的なので誤植を訂正するのは容易ではあるのでっすが、それが印刷されて出版流通されまっすと、基本的に楽譜が売り切れて再版されるまでは直せないっすよね。良心的な出版社は後から正誤表を配布したりしまっすが、本来的には誤植などない方がいいわけで・・・。
コンピュータ浄書以前、欧州は彫版、日本はハンコによる浄書がされちょりまっした。
ハンコ浄書はミスっても後から訂正が可能なんでっすけど、彫版は無理・・・。なので、古いコピーライトの楽譜は再版されてもまず誤植が訂正されないのねん。
再版されて訂正されたと思いきや、「何でここは直ってないねん!」という事もままありんす。一つ例を挙げまっしょう。
ドイツの老舗出版社、Schottは素晴らしい出版社でっす。ギターの世界ではアンドレス・セゴビア・エディションを数多く出版しているのでお馴染みでっすね。
でもねぇ、セゴビア・エディションは誤植の宝庫なのよ・・・。
Joaquín Rodrigo(ホアキン・ロドリーゴ)の“Tres piezas españolas(3つのスペイン風小品)”の1曲目、“Fandango(ファンダンゴ)”を見てみませう。まずは1963年初版。
次に1991年の新版。
赤枠部分のパッセージにご注目下され。1991年版の方は1小節目のコードが全て1音多くなっていまっすよね。さて、こちらはどちらが正しい楽譜でせうか?
答えは
どちらも正しくないっ!
でっす。
なんでそんな事がわかるかって?自筆譜を見られたしっ!
2小節1拍表のコードは1小節1拍と同じなのさ。が、But、しかし、1963年版も1991年新版も下のBが抜けちょる。
これ以外にもこの曲は奇っ怪な誤植が多くて結構萎えまっす・・・。
微に入り細に入る校正をすればかなりの確率で誤植は無くなるとは思ふのでっすが、オイラも愚ブログによく楽譜を載せるぢゃないでっすか?
楽譜を書いている時はかなり気をつけてはいるのでっすが、それでも後々、誤植に気づく事しばしばなので、実は楽譜の浄書って結構大変なのねん・・・。
もうちょっと何とかならんもんかいなとは思ふのでっすが、可能であればクラシック作品は作曲者の手稿譜も付されるとええなぁ。
実際にそういう楽譜もあるんでっすけど、なかなか全てをそういう形態にするのは非現実的ではあるかもしれんね。(ページ数が多くなる≒楽譜価格が高くなる・・・みたいな)
駄長文を連ねてしまいまっしたが、せっかくでっすからMarcin Dylla(マルシン・ディラ)の素晴らし過ぎる“3つのスペイン風小品”の演奏動画をどうぞ。
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