
2003年4月某日、初台の新国立劇場で開催されたTomatito(トマティート)の公演に赴きました。
ワタクシにとって初めて生で聴くトマティート体験でございまして、公演日が近づくにつれて遠足前日の小学生のように胸がときめいてしまって、当日は寝不足の目を擦りながら出かけたのですが、実際に目の当たりにしたトマティートのフラメンコ・ギター演奏は、とんでもなく素晴らしくて終始メロメロでございました。
公演が進行していくうちに自分の体温がグングン上昇していくような感覚を覚えるほど、実にムイ・ビエンっ!な体験でございました。
フラメンコ・ギター界隈ではトマティートのギターは深みのある“黒い音”と評される事がございますが、これはちょっと言葉では説明出来ないもどかしさはありますが、有り体に申しますとパコ・デ・ルシアの洗練された音の感じとは違って、何と言うかリズムの刻み等が良い意味で“粘るようなノリ”で、また、拍に瞬間的に音をグググッと詰め込むある意味トリッキーなファルセータが成る程、“黒い音”と言われればさもありなんと思います。
パコはパジョ(非ヒターノ)、トマティートは生粋のヒターノなのですが、そのあたりの違いが良く分かりました。
さて、終演後、多幸感に包まれたまま客席の扉を抜けて帰宅の途につくべく出口に向かおうとしましたら、ちょうど同じように客席の扉を開けて出てこられた方と目が合いました。
それは誰あろう、山下和仁さんでした。
以下、思い出せる限りの会話。
Luzia:や、山下先生。こ、こんばんは。〇〇(←店の名前)の××(ワタクシの名前)です。え、え、え、どうして山下先生がトマティートの公演にいらしてらっしゃるのですか?(完全にテンパるワタクシ・・・)
山下先生:あぁ、××さん。お久しぶりです。お元気でしたか?実は小松原さんからご招待券をいただいたのです。トマティートの演奏はやっぱり素晴らしいですね。(いつものように優しく柔らかいお声)
Luzia:そ、そうでしたか。え、でも、そのために長崎からご上京されたのですか?
山下先生:いえ、実は明日からイタリアへ公演のために向かうので今日は東京泊まりなんです。ホテルからここまで近かったので、これは是非ともトマティートの演奏を聴かねばとやって来たのです。
Luzia:そ、そうだったんですね。それではお気をつけて行ってらっしゃいませっ!(ぺっこり45度でお辞儀)
という感じで、相変わらず山下先生の前ではシドロモドロになってしまうワタクシでございました。
さて、山下さんが仰った“小松原さん”とは日本におけるフラメンコ舞踏の世界で黎明期から活躍されているレジェンド、小松原庸子先生の事でございます。(何とこの3月で95歳になられましたっ!しかも、現役っ!)
山下さんと小松原先生とのご関係については以前、こちらに書いた通りでございます。
小松原先生はこれまでも何度かトマティートを招聘されており、この時は恐らく過去に共演された方々や関係者の方々にご招待券を進呈なさったのだと思われます。
この公演は全4公演で開催されたのですが(うち2回は1日2公演)、そのうちの1回で山下先生と邂逅を果たすというレアな体験に不思議な御縁を感じました。
今となってはとても良い想い出です。

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